File No. 002 [Bow's Boards Story]

K-SHAPE GRAY GHOST

Posted on April 19, 2013 by Nozomu Sugimoto

[ board data ]
GRAY GHOST
Shaper: 抱井 保徳
Size: 7'6" × 17"3/4 × 2"5/8
Fin: シングル
Color: グレー、アブストラクトピグメント

このボードを入手したのは今から 10 年ほど前でした。
当時、ボクが通っていた神戸市須磨区のサーフショップ KATSU KAWAMINAMI DESIGN(通称 KKD)の店頭に並べられていました。 サーフショップのオーナーは、最新鋭のボードだけでなく、トラディショナルなボードも 好む人物で、玄人受けするロングボードから最新鋭のコンペティションのショートボー ドまで並べられていて、ボクの大好きなスポットでした。
特にボクは抱井 保徳氏(かかい やすのり。Kakai Surfboard オーナー&シェーパー http://www4.ocn.ne.jp/~k-shape/ )の削るボードが好きで、普段使用するボードはもちろん、ハワイで使用するガンなども、当時ボクが購入したボードのほとんどが抱井氏に削っていただいたものです。
物腰の柔らかいおだやかな人柄で、美しい流線を描くようなライディングは見る者を魅了する、「ソウルサーファー」とも呼ばれる抱井氏は、今もボクのヒーローです。

抱井氏の略歴をご紹介しますと、サーフィンを始めたのは彼が 13 歳の頃。勝浦市守谷海岸にてビーチデビューして以来、全日本ジュニア部門で活躍。その後、プロ・サーファーに転向して、1976 年の日本人初のバリトリップに参加、オーストラリアやハワイの世界大会に参戦し、当時の『サーフィンワールド』の表紙を日本人として初めて飾った人物です。 ボード作りに携わったのは、16 才の時。日本サーフシーンの草分け的な存在で「ミッキー 」さんの愛称で敬愛される千葉県鴨川の川井 幹夫氏のサーフボードブランド・ステップインが始まりましただったそうです。

1975 年に湘南に移り、サーフィン界の老舗として知られるゴッデスに所属、フィンフォイルをまかされ、1978 年にディック・ブルーワーの前身であるナガヌマサーフボードに移籍 、シェーパーとしてのスキルを磨き、1994 年に、自身でデザイン シェープするオリジナルブランド K-SHAPE をスタートして現在に至ります。
1970-80 年代のショートボードへの転換期を迎え、ショートボードでの スムースなラインは当時の日本でのサーフィンに影響を与えたと言われています。
彼の削るボードの多くは、アグレッシブに波を攻めるという意味においてショート ボードの延長線上にありました。そんな中で、この GRAY GHOST という名がつけられたボードは異色で、見た瞬間、心を奪われるような光を放っていたのです。 このボードで、頭オーバー以上の大波を、スタイリッシュなラインを描きながら乗れたらどんなに素晴らしいだろう…優雅なターンを夢見て、買うことにしたのでした。

当時通っていたのは四国や日本海で、GRAY GHOST で最初に波に乗ったのは鳥取県の名和 川というスポットでした。 その日の波はサイズが大きすぎて、鳥取市内のビーチはほとんどのスポットがクローズア ウト。予想通りのコンディションだった鳥取市内のスポットを尻目に、ボクたちは迷わずさらに西へと車を走らせました。 サイズが大きくなると波のコンディションが良くなるスポットをチェックしながら、たどり着いたのが名和川でした。 名和川は、レギュラーの波が良く、大きなスウェルが入るとロングショルダーが現れる、鳥取県有数のグッドスポットです。 この日の名和川の波は、サイズが頭オーバー、面ツルという絶好のコンディションでした 。
すでに海に入っているサーファーは多く混雑していましたが、良い波に魅せられ、ボクたちも入水することにしました。

GRAY GHOST は、普段ボクが使っているショートボードよりも細身で、最初パドルを開始した時はパドルが左右にふらつき苦労しました。 時間が経つにつれ、パドルも何とか安定してきた頃、みんなよりも少し奥のポジションで波待ちをしていたボクに向かって、良いうねりが入ってきました。

ボードをピークへ近づけ、テイクオフの体勢に持っていき、パドルの速さとブレイクが上 手く合った瞬間に立ち上がると、ボードはスムーズに斜面を走り出し、ツルツルの斜面がどんどんせり上がってきます。 ボトムに降りて、軽く体を傾けると、ボードは斜面を駆け上がりトップへ。 トップに到着する前に、今度は身体をボトム側に傾けてみると、今度はスプレーを飛ばしながら、ボードは綺麗な円運動をしてターンを描く。
これを何度も繰り返してインサイドまで…

この日は5本のマンライができました。 マンライというのは、「満足ライディング」。ディックブルーワー オガマ氏の造語です。
あれから 10 年の年月が経ち、バリ島に移ってきた今も、大きなスウェルが入ると、チャングーのバトボロンやオールドマンズにこのボードを持ち出して楽しみます。 ショートボードでビシビシとターンするのも楽しいですが、ドライブ感を味わう波乗りもまた愉しいものです。